テラ王国の話【シングルキャスト編】
こんばんは。エイミです。
金曜の夜、いかがお過ごしでしょうか。
先日、Phantom Quest の観劇体験がめちゃくちゃ幸せだった話を書きました。
先ほど、 Phantom Quest SpinnOff-02【最年少A+の話】を読んで、はちゃめちゃに良くて、またこの国に帰ってきてしまった次第です。
今回は、キャラクターの話をしようと思います。
お話の本筋に触れますので、ネタバレを避けたい方はご注意ください。
フィーネ:白服
Fine 終わりを意味するこの語が筆頭にある物語はどんなだろうって、名前を貰ったときから惹かれてた。まさに、終わらせる人だった。
楽譜では、D.SやD.Cで前の小節に戻った後、演奏を終了する小節の右下に書いてあるfine。5年前に残って、自分を、バディを、救って、この物語の幕を下ろすこの人に、これ以上の名前はない。
白服さんって器用だなあって思う。最初に出てくる5年前に戻って今に辿り着いたフィーネAと、2番目に出てくる半日を跳び越えて今まで生きてきたフィーネBと、回想に出てくる5年前のフィーネCと、あとトレハン紹介 (w/ジャスパ) の時の白服さんが滲んじゃってる喋らないフィーネD?を演じ分けてるんだから。
初見でも全然戸惑わずストーリーが入ってきた。
劇中で「役者になる気はありませんか?」なんて新進気鋭の劇作家に認められるような台詞回しをしなきゃいけないなんてメタなプレッシャーも物ともせず、長台詞のキレと言い終わりの爽快感は回を追うごとに増して、「これが座長の風格か」と思わされた。
天才ノーチラス、は決して絵に描いたようなヒーローではない。
劇中劇Phantom Questで最初にディアナが演じていたようなキャラクターではない。
でもだからこそ、ゼノはこの人を案内して歩くし、ディアナはこの人の行く先に立ってる。シレオはその才能にあこがれて着いて行く。
やっぱり、白服さんのBGMは「バーロー!ヒーロー!」なのかもって想いながらフィーネを観てた。
一番好きなシーンは The Song of Losers に巻き込まれて、だんだん楽しくなって誰よりもアイドラビリティ高く踊っちゃうフィーネさん。ああいう風に音楽とダンスで、親交の経過を示す舞台表現好き。
ディアナ:とみたけ
この人も、「看板俳優」という役どころのメタなプレッシャーを背負って演じてた人。でもそれをはねのけて、役者をしてるときと、素のディアナさんを当たり前に演じ分けるんだから凄い。Diana は月の女神。狩猟の女神。女性名も違和感がない。DIVA。
全てのことをポジティブにリフレームしてしまう無茶を成立させてしまえる。
その説得力は、とみたけさんの人柄を知っていると倍増する。
とみたけさんは、言葉を凄く上手に使う人だ。人を傷つけそうな言葉は上手に包んで、でも言わないわけじゃ無くて、優しく着地させる。それで、最後には「ありがとう」って結んでくれる人だ。
そんな人が、「ハッピーエンドで終わる可能性ってあると思わない?」「0.001%はあるってこと」って言ったら、なかなかの低確率だけど「あるかも」って思う。
その「あるかも」って印象が通奏低音として流れていることが、この物語ではとても大事だから、とみたけさんのお芝居はずっと成功してた。
好きなシーンは、フィーネに離別を言い渡されて、ひとりで、切なく歌い上げるThe Song of Losers。発煙筒を焚きながら、語るように。その後の、ボニートの「花火か」と、リアンの「違いますよ、坊ちゃん」も含めて、ここの転換は大好き。
ゼノ:にーちゃん
xeno 異質なもの。外から来たもの。トレハンの中のレガポ。
この作品の中で、わたしは、この人の役柄とお芝居がとてもとても好きだった。
今回のクエストに参加する有象無象のトレハンの中で先生の様に振る舞うゼノ。ディアナの前で、レガポの肩書きを外した只のゼノ。フィーネの横で対等にバディとして振る舞うジーニ。過去を悔やみながらも今を肯定する屈折を抱えた人。
波のような心を、正しく存在させてた。キャラクターとか表象を超えて、ゼノは人だった。しかも観る人が自分を重ねられる人だった。
それから、歌声が美しすぎた。ミュージカルの中で、これは圧倒的な正義。
好きなシーンは、「後悔してて何が悪いって答える」ここに決まってる。
初演から楽日までどんどん、乗る感情がグレードアップしていって、素晴らしかった。
フィーネの言伝を、ディアナに伝える場面も好きだったな。
クラヴィス・ロンガ:野崎弁当
clavis longa 「鍵/長い」 この、5年という時間を跨いで行き来する長い物語を読み解く鍵であるまさにキーマンの王子。
観客が迷わないように、ヒントをくれて、全体を見渡してくれる語り手。
好奇心が旺盛で市井の人の近くにいる王子は適役だ。
野崎さんはもう、全体的に「役者」だ。客演の人みたいだった。
バルト一座がわちゃわちゃ騒いではけていった後も、波音と一緒にクラヴィス王子が現れた途端、そこは静謐な夜。品格。風格。
でも、ほんとは、芝居が好きで、トレジャーハンティングもしてみたくて、王子として危険から遠ざけられることには不本意である冒険心を持った人。もしかしたら、ボニート坊ちゃんにはちょっとした羨望の眼差しを向けているのかも知れない。
好きな台詞は「伐採が足りなかったようだね」ここに滲む人間味が愛しい。
台詞と音楽が溶け合うような「それがたまらなく好きだと君は言った」の節回しも好きだった。声が好いんだよなあ、野崎さん。
(メインキャストだけで2000字はまずい、ロンガだよ……)
ドルイド:なるき
なるきさんは人たらしだなあ、って思っている。
この役の狂気とギャップは美味しい。良い役をもらったね、と思わずにいられない。
勿論、振り切って演じきらないと傷を負うんだけど、なるきさんはそれができる。
マッドサイエンティストならぬマッドプレイライト。好きになっちゃうよな~。
なるきさんの怒りの表現好きだったなあ。「イライライライラ」って口で言っちゃうんだもんな。笑いながら怒る人を地で行っちゃうんだもんな。
虫のシーンとか、Look Aheadの旋律パートとか、成長著しくて一番楽しかった。
アウラ:ぱっち
ぱっちさんは有能だ。メインキャストと張るぐらい初演から仕上がってた。
どういうキャラクターなのか、始めからよく分かった。でも、そこからどんどんまだまだ伸び代があった。劇中劇の名乗りのアドリブも上手だった。
「上手」そういう人がいてくれるといーんだ!
2番手に収まってしまうアウラという役どころがなんとなくダブって思えてしまう。
でもドルイドは、あなたをフィーネ役に据えて脚本を書いたんだよ。
長台詞も憂いのある役もできると信じて託したんだ。
ぱっちもきっとこれから沢山を託される。そんなメタメッセージを受け取る。
シレオ:あづ
スタッフ投票第1位のキャラクターであること、納得です。大納得です。
sileo 「私は黙る」寡黙な一匹狼。この人が、自分から沈黙を破るとき。
この人の心が動いているとき。その瞬間を見ていくのがとても面白かった。
「邪魔すんなよ」ってゼノに噛みつくタイミング。この間は凄く難しい。ドキドキする。回を重ねるごとに、テンポが良くなる。呼吸が合ってくる。
とにかく、前述のスピンオフがめためたによかった。シレオを愛してしまった。
図書館に居る子に悪い子はいねーからな。
これまた、美味しい役だ。あづくんの本来の人柄とは違うとは言え、その佇まいと三白眼に映えていましたよ。生意気な口も、その声によく合っていました。
ノーチラスには敬意や憧れが隠しきれず露わになる。人を尊敬できる子に悪い子はいない。この人の幸福な未来を願わずには居られないな。あづくんにも。
ヨークス:とみー
ここにも役者がいた。周りを巻き込むムードメイカー。
色物に見えて、勤勉で博識。とみーさんそのものではないかな。cosmic!!はDDでは加入の経緯から後輩だけど、そんなわけないスキルを持ってる人たち。
シレオは最年少A+の天才だけどヨークスだってあっという間に駆け上がることができる秀才だ。年下であろうシレオに着いていける柔軟な価値観。エトオリはきっといい町なんだろうな、住みたいなと思うまである。
もしモブとしてPQ界に住むなら、エトオリでパン屋を営みたい。
ルプス:れお
lupus「狼」まさにれおくんのこと。
トレハン組合員。イメージは忍術学園の小松田さん的な位置づけ。ルプスさんはきっと有能事務員。些細ながらトレハンとしては致命的な何かの欠落があって、裏方に回っているとかだといい。
我々オタクは、すぐにデフォルメして理解する。人間とか人間関係とか複雑怪奇なものに、ごくごく単純な言葉を当てはめて、固定して、安心しようとする。
幼なじみ、主従関係、陰キャ、陽キャ。でもそういうの、読みやすくて分かりやすくていいよね。オタクがいてくれると色々捗るよね。
ジャスパ達を遊ばさせてくれてありがとう。れおくんがDDにいてくれてよかった。
(来ました推しバディ!あと少し!)
ボニート・ルーカス:え~すけ
bonito 「美しい」を名前にしちゃうんだから、ルーカス家での愛されぶりが明らかに出てしまう。坊ちゃん。C級と紹介される度、咳払いでかき消して、自分を大きく見せようとする。臆病という心の病を抱えながらも、何か大きなことを成し遂げたいと願う野心家。
この人はピュア。人が生きながらえることは「善」、空に上がる煙は「花火」、嘘はついてもすぐばれる。心を動かす計算式が単純明快で衒い無くて、観ていて心地よかった。
「ボニート・ルーカスだ!」自己紹介だけでつかみはオッケー。
「否定しろよ~!」のバリエーションでリアンを試しながら、観客に船室のシーンを観飛ばさせない。結果、バディ推しに陥落せしめる。策士だ。
ちゃらついたネタキャラに落とさないのは、こぬさんの先輩としての力量。
幼さの残る役柄なのに、ちゃあんと芝居をひっぱってくれる。安定。
リアン:青野精一郎
C級の坊ちゃんの傍に使えるB級の執事。もう、好きでしょそんなの。
初演の固さも良かったけど、だんだんと柔らかく温かくなっていくのが良かった。
アドリブも、真剣に遊んでいるのが好印象だった。
坊ちゃんは時々破天荒だったけど、それを、PQの世界観に着地させて本筋に返していたのがリアンさんだった。青野さんの本筋の理解とミュージカル愛によって成し遂げられたことだと思ってる。ボニートとリアンのアドリブは、作中で揶揄されるような「破壊行為」ではなかった。「ファインプレー」だった。
「否定しろよ~」からのやりとりも、5年前のゼノとフィーネの前に出たボニートを回収する動きも、換気タイムの関西気質も、毎回とっても楽しかった。
「尾鰭だらけの土産話」の歌声の伸びや、コンパスを出す所作の滑らかさの変化が回を追う度に変わっていくのが素敵で。一人で石を探しに行こうとするボニートに掛ける「坊ちゃん」の声や、「はい」「そうですね」って相槌ひとつとっても動作も表情も声色も変わっていくから、解釈の変容を見取るのが面白すぎた。
青野さんのお芝居をもっと観たいなあって思ったし、この人の解釈をもっと聞きたい。
スピンオフ小説がでたら青ラヂで朗読してくれますように!!!!!
(シングルキャストで力尽きました……ダブルキャスト、クアドラプルキャストについてはまた……いずれ……)
みなさまどうか、月の明るい良い夜を。おやすみなさい。