蓼食う虫が好き。

アイドルを推し始めた言葉オタクの記録。

テラ王国の話【観劇体験編】

こんばんは、エイミです。

「今年は厄年だあ」って言うと「全世界的にそうですよね」と返される、そんな2020年。個人的には、コロナ禍に拘わる変化と拘わらない変化が相俟って、本当に苦しい年で、もう2度と繰り返したくないし、今日まで生きているだけで偉いなあと思うくらい。2020年もあと40日。やっと終わるなあ、というのが正直なところ。

2020年11月5日から11月15日に、HY TOWN HALLで上演されたCCCreation Presents のオリジナルミュージカル『Phantom Quest』

これが「今年で一番幸せなできごとリスト」の上位になるなあ、これについては書いておかねばなあと思って久しぶりにキーボードに触っています。

きっと長くなりますが、お付き合いいただけたら幸いです。

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2020年2月23日HY TOWN HALLにて行われた「パリパリじゃないズ!!!!!!」、この日を境にライブのステージを一度も観ないまま、春も夏も秋も過ぎていってしまうなんて思わなかった。音楽もディスプレイ越し。お芝居も映像で。

でも、それでも、無観客でも、公演は無くなってはいなかったから、続けてくれる表現者の皆さんに感謝しかなかったし、その努力や工夫に敬意しかなかった。

意図的に「足りなさ」から目を背けていた、と言うことでも無いんだけど、その時々のベストをありがたく受け取っていたのだけど、澱のように、自分に空白が溜まっていくのは感じていた。

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夏頃から少しずつ、国内で人の移動が許される空気になってきて、客入れの公演も少しずつ打たれ始めた。不安定な空気の中で、自分が真っ先にそこにはせ参じることなんてできなかったけど、演者さんと観客のみなさんの呼応が観られるだけで涙がでるくらい嬉しくて、「こうであるべきだ」と思った。

その頃、受け取った、11月の公演のお知らせ。

 ワクワクした。自分が観れる・観れないは置いておいても、新しいミュージカルが生まれて、お客さんの前で披露されることにワクワクした。

欲を言えばそこに私も居たいと思った。このときからずっと持続するワクワクが始まった。

7/31 キャスト情報解禁。推しの名前を確認。

9/29 キャストビジュアルと配役発表。名前を貰ったら解釈が始まる。

 

10月、チケットの受付開始。紙のチケットを発券したとき、昨年12月ぶりの動作だったことに体がびっくりした。

 

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11/5 初日。幕が上がらない可能性はいくらだってあった。

仕事を終えて、開演時間には間に合わなかったので、配信がアーカイブになるのを待ってすぐに観た。物凄く面白かった。まだまだ荒削りではあったけど、私の大好きなミュージカルが舞台に乗っていた。小さな小さなステージなのに、工夫の凝らされたステージングに感服した。笑ったし、泣いた。でも一番嬉しかったのは、カーテンコール(ライブハウスだから勿論緞帳はないんだけど)の座長、白服さんの挨拶。

「初日迎えたぞー!」の声と涙だった。ああ、初日を迎えられたんだって。

それから毎夜、毎夜、物語の舞台、テラ王国へ日参する10日間が始まった。

残念ながら(本当に残念ながら)全公演は追えなかったんだけど、毎回毎回、役を掴んで良くなっていくシングルキャストの皆さんと、アンサンブルと本役を演じ分けるようになっていくダブルキャストの皆さんと、アクセントとしては各自スパイスが効き過ぎている日替わりジャスパの皆さんと、それから随所に入る回替わりのアドリブに、一公演だけで観劇を追えるなんてできっこなかったんだってPQ期を振り返って思います。

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ありがたいことに、公演期間最後の2日間、ソワレを観に行くことができた。

万難を排して、会場に向かった。公演が観られるなら。消毒やらマスクやら何やらかんやら。そんなことは容易い。座席ではしゃべらない。そんなことは容易い。公演が観られるなら。何一つ手間じゃない。「座席番号」「ドリンク代」「上手」「下手」「SE」「パンフレット」「セット」「影ナレ」「客電」「ダブルカーテンコール」そんな言葉を思うことすら久しぶりで、泣けてしまうくらいだった。

何度も通ったライブハウスが、正しく劇場然としていることに、まず感動して。

そこで、同じ舞台を楽しみに待つお客さんたちが、空間を共有していることに併せて感動して。それから、きっと、スタッフさんたちもこの舞台を愛してるんだって空気を感じてもうなんか、駄目だった。(オタクの言う駄目は褒め言葉。)

やっぱり、目の前で観る、演者さんから受け取れるパワーは凄い。

動きも声もディスプレーは正確に届けてくれていたけれど、やっぱり、カメラよりも目は優秀で、空気は音以上の波を届けてくれる。

しかも、千秋楽に向かって、熱がどんどん上がっていく。

終盤のメインキャストの涙を混ぜた歌声は、表情は、圧巻だ。

沢山笑わせてくれた挙げ句の、そんなお芝居に心打たれてしまう。

出演していた全員の職業は「アイドル」だ。

でも、何が本業とか、そんなのは、どうだっていいんだよ。

こんなに真摯に作品と向き合った人たちは、どう考えたって「役者」だもの。

ニューノーマルで、色んな新しい価値観を見つけていく今にあって、こんなにも古典的な演劇という娯楽でいつまでも新しく幸せになれる。

毎日新しく変わっていく、作品としての成長と、個人としての成長を見せてくれた、キャストの皆さんに、最大限の拍手を送りたい。

全身を受容体にして、作品に拍手を送りたいという欲が多分、人間にはプログラミングされている。疎かにしてはいけないよって、改めて思った体験でした。

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表題曲「Phantom Quest」は幻を歌った歌。「 あるかは分からない、ないとは言えない。」そんな幻みたいな物に、沢山、惑わされた1年だった。

でも、主人公ディアナのフィルターを通れば、それは「可能性」の歌。

そう言われれば、沢山の可能性に力ずくで気付かされた年だった。

そうそう。在宅で働けたらなって思ってたよ。集まってやる研修とかストリーミングで良くない?って思ってたよ。「これ、要るの?」って思ったものズバッと無くなったよ。

隣にいてくれたら安心感のありすぎるバディ、ゼノの歌う「Yes and No」。

大きな変化をもたらす選択したゼノが歌う。「あの日、俺が、選んだあの選択。後悔してるか?もしそう聞かれたら」「後悔していて何が悪い、って答える」。

正直、今年の仕事には後悔ばっかりだ。変化に対応するのはとても難しい。「あぁしていれば、こうしていれば」振り返って思いつく最適解。

どんな物事も前向きにしちゃうディアナが言い切る。「俺だった可能性はない!」

そう。今年はもう過ぎてしまった。その時々を精一杯生きてきた自分が、もっといいことも思いつくにせよ、他の道を選べる可能性はない。変えられるのは、未来だけ。

どんな未来にするかは、「それは、自分次第」。そうなんだなー。って現実に絡めて腑に落ちるメッセージを受け取って。現世に帰ってきました。

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観劇ができない世界線で、私の半分が空っぽになってしまっている感じがしてた。

PQのお陰で、1/4ぐらい満たされて、前向きになれた気がするし、来年をどうにか迎えられそうな気がしている。余韻や、頭の中に「Refrain」する音楽で。それから、グッズやDVDで。生きていけそう。あの夜、拍手のひとつになれて、幸せでした。

次回公演が楽しみだな。5年だってまあまあ待てるくらい。:)

(観に行った体験だけで3000字超えてしまったので、キャストやシーンについてはまた改めて…いずれ…書きたいなあ。Phantom Quest 大好き!)